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固体電極を用いたボルタンメトリーアナリシス (VA) による微量金属分析 – Part 3 改良型scTRACE Gold電極

2020/09/07

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この記事ではストリッピングボルタンメトリーおよび scTRACE Gold 電極を用いた重金属分析の応用例を解説しています。

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固体電極を用いた微量金属分析に関する本シリーズ前回の第2回目では、 scTRACE Gold electrode電極を紹介しました。第3回目では、この電極を用いて実施できるさらに多くの応用例について説明しますが、今回は金マイクロワイヤーの表面を別の金属の薄層で修飾した後の応用について解説します。

なぜ電極材料を変えるのですか?

このシリーズの Part 1 では、Biドロップ電極について解説しました。ストリッピングボルタンメトリーは二段階での測定法になります。

図1. Ag膜で修飾した scTRACE Gold 電極を用いたアノーディック・ストリッピングボルタンメトリー (ASV):鉛の析出(溶液を撹拌)

第一段階では、分析対象物(アナライト)を作用電極上に析出させます。アノーディック・ストリッピングボルタンメトリー(ASV)の場合、アナライトは還元され、電極材料と合金を形成します(図1)。一方、吸着ストリッピングボルタンメトリー(AdSV)の場合、アナライトは錯体を形成し、それが作用電極表面に吸着します。

図2. Ag膜で修飾した scTRACE Gold 電極を用いたアノーディック・ストリッピングボルタンメトリー (ASV): 鉛のストリッピング(溶液は撹拌しない)

続くストリッピング段階では、析出物を再び溶液中に戻し、その際に析出したアナライト量に比例した分析シグナルが得られます。ASVの場合、電気化学反応はアノード方向への掃引中におけるアナライトの再酸化です(図2)。一方、AdSVの場合は、吸着した金属錯体がカソード方向への掃引中に還元されます。

析出およびストリッピングの両段階は、いずれも速度論および熱力学の原理に従います。詳細には立ち入りませんが、その結果として特定の電極材料では測定できないアナライトが存在します。
この問題を解決する一つの方法は、既存の作用電極をより適した別の材料で修飾することです。

アプリケーション

飲料水中の鉛

地表水や地下水に存在する鉛の多くは人為起源であり、汚染された土壌からの溶出に起因しています。一方、水道水中の鉛は、多くの場合、家庭内の配管設備に由来します。鉛製の配管は、1970年代まで一部の国で広く使用されていました。鉛(Pb)は水にほとんど溶けませんが、酸素の存在下では徐々に溶解します。その結果、水道水中の鉛の許容限度が大幅に超過する可能性があります。現在では、自治体の上水輸送に鉛管を使用することは禁止されていますが、古い設備がそのまま残っている住宅も依然として存在します。

世界保健機構(WHO)は、飲料水中の鉛の基準値を10 µg/Lと推奨しています。欧州連合では、今後の基準値は5 µg/Lというさらに低い値に設定されています。

鉛の定量には、scTRACE Gold 電極を銀膜で修飾して使用します。この銀膜は、別のめっき溶液から ex situ(外部) でめっきされます。一度めっきすれば、複数回の測定に使用することができます。膜が消耗した場合は除去し、新たに銀膜を再めっきします。銀膜の副次的な利点として、主に再生可能な銀膜が劣化の影響を受けるため、scTRACE Gold 電極自体の寿命が延びる点が挙げられます。

再現性試験では、3本の異なる電極を用い、4日間にわたり 10 µg/L の Pb を測定しました(総測定回数=10)。その結果、Pb の平均回収率は 96%、相対標準偏差は 5% でした。

884 プロフェッショナル VA を使用することで、水中の鉛濃度を 0.4 µg/L まで測定することが可能であり、欧州連合における将来の基準値に対しても、簡便かつ信頼性の高い定量が可能です。

 

946 ポータブル VA アナライザー を使用することで、水中の鉛濃度を 0.4 µg/L まで測定することが可能であり、欧州連合における将来の基準値に対しても、簡便かつ信頼性の高い定量が可能です。  

さらに詳しくは、アプリケーションノートをご参照ください。

Lead in drinking water – Straightforward determination by voltammetry using a gold microwire electrode

 

飲料水中のニッケルおよびコバルト

鉛と同様に、水源中のニッケル濃度も人為的影響によって上昇することがあります。配管部品や蛇口は、仕上げがクロムであっても、防食目的で薄いニッケル層がめっきされていることが一般的です。さらに、ニッケルはステンレス鋼からニッケル黄銅や青銅に至るまで、多くの合金の構成元素となっています。ニッケル鋼合金製の調理器具やニッケル顔料を含む食器も、ニッケル濃度の上昇を引き起こす可能性があります。

欧州連合における飲料水中のニッケルの最大許容濃度は 20 µg/L であり、世界保健機構(WHO)は 70 µg/L を基準値として推奨しています。


ニッケルおよびコバルトのボルタンメトリー定量には、scTRACE Gold 電極上に ex situ(外部) で修飾したビスマス膜を作用電極として使用します。ニッケルおよびコバルトは、いずれも DMG(ジメチルグリオキシム)錯体の形で定量されます。

この方法は、すでに水銀電極を用いて信頼性が実証されており、そのため本アプリケーションを水銀を使用しない電極へと移行することが可能になりました。946 ポータブルアナライザー では検出限界 1 µg/L、さらに 884 プロフェッショナル VA のラボ用装置では 0.2 µg/L というより低い検出限界が得られます。本法は、法的要件への適合を監視するうえで十分な性能を有しています。

標準溶液中の 1 µg/L Ni に対する回収率は約 99%(10回測定の平均)であり、相対標準偏差は 5% です。  

下のリンクをクリックすると、関連アプリケーションノートを無料でダウンロードできます。

Nickel, cobalt in drinking water – Straightforward determination by voltammetry using a gold microwire electrode

 

飲料水中のクロム(VI)

飲料水中のクロム(VI)の問題は、2000年に公開された映画 «エリン・ブロコビッチ (Erin Brockovich)» によって広く一般に知られるようになりました。

この物語は実話に基づいており、Hinkley という小さな地域で起きた出来事を描いています。そこでは地元のエネルギー供給会社が、発がん性のある六価クロムで地下水を汚染しました。同社は事件の隠蔽を試みましたが、住民の間で腫瘍やその他の健康被害が増加したことから、最終的に汚染された飲料水が原因であることが突き止められました。

環境中の Cr(VI)汚染は、通常、さまざまな工業プロセスの不適切な取り扱い、特に電気めっきによるクロムめっき廃棄物の不法投棄に起因します。世界保健機構(WHO)は、飲料水中の総クロムの最大許容濃度を 50 µg/L と推奨しています。

scTRACE Gold 電極を ex situ(外部) でめっきした水銀膜により修飾することで、クロム(VI)は DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)との錯体として定量することができます。30 µg/L の Cr(VI)を含む標準溶液の回収率は 115%(3回測定の平均)であり、相対標準偏差は 2% です。

946 ポータブル VA アナライザーを使用すれば、Cr(VI)濃度を 2 µg/L まで定量することが可能であり、現場でのオンサイト測定が行え、遅延なく即時に結果を得ることができます。

詳細については、以下の無料アプリケーションノートをダウンロードしてください。

Chromium(VI) in drinking water – Sensitive determination on the mercury film modified scTRACE Gold (DTPA method)

 

図3. メトロームの scTRACE Gold 電極は水中の複数元素の微量分析に適しています。

まとめ

scTRACE Gold electrode ( 図3)で可能なすべてのアプリケーションについて紹介することは、この記事の範囲を超えてしまいます。下表には、現在メトロームから提供されている、scTRACE Gold を用いた各種元素の分析法の概要を示しています。

各元素の定量や特定のマトリックス中での分析に関してご質問がある場合は、メトロームジャパンまでお問い合わせください。

このシリーズの他の記事

この記事では、電極の材料の異なる scTRACE Gold 電極をテーマに取り上げ、飲料水中の重金属イオンの定量にどのように使用できるかを解説しました。

その他の回では、これらの固体電極を用いた微量金属分析について紹介しています。

作成者
Zumbrägel

Barbara Zumbrägel

Product Manager VA/CVS
Metrohm International Headquarters, Herisau, Switzerland

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