固体電極を用いたボルタンメトリーアナリシス (VA) による微量金属分析 – Part 2 scTRACE Gold電極
2020/08/10
記事
ja
ストリッピングボルタンメトリーおよびscTRACE Gold電極を用いたヒ素、銅、鉄、鉛、六価クロム[Cr(VI)]などの重金属分析について詳しく解説しています。
固体電極を用いた重金属分析シリーズの第2回では、scTRACE Gold 電極 に焦点を当てます。金電極は、電気化学分野において数十年にわたり使用されてきました。しかし scTRACE Gold 電極 に焦点を当てます。金電極は、電気化学分野において数十年にわたり使用されてきました。しかし、scTRACE Goldは非常に特別な設計を有しています。
もともとはヒ素のボルタンメトリー定量を改良する目的で開発されましたが、その後、銅、鉄、鉛、さらには有毒な六価クロム[Cr(VI)]など、さまざまな元素の定量にも適していることが示されています。
電極はどのように機能するのか?
作用電極は金のマイクロワイヤー(図1)であり、その太さは人の髪の毛よりも細いものです。この特殊な電極形状により、初期準備時間が非常に短くなります。
他の金電極とは異なり、scTRACE Goldはわずか数分で使用可能な状態になります。
この電極のもう一つの利点は、参照電極および補助電極がセンサー裏面に印刷されている点です(図2)。これにより、ボルタンメトリーシステムで通常必要となる追加の2本の電極にかかるコストを削減できるだけでなく、参照電極のメンテナンスも不要になります。
アプリケーション
高い感度と簡便なセットアップにより、ボルタンメトリーは飲料水分析において有用なツールとなります。
安全な飲料水の確保は、21世紀における主要な課題の一つです。細菌やウイルスといった微生物汚染に加え、飲料水中の重金属の存在も健康リスクとなり得ます。安全な水を供給するための第一歩は汚染物質の特定ですが、健康に有害な濃度の重金属は目に見えません。多くの重金属については、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)や欧州委員会などの当局によって、飲料水中の基準値が定められています。水質分析ラボでは、飲料水中の金属濃度をモニタリングするために、しばしばICP(誘導結合プラズマ法)が用いられています。
ボルタンメトリーは、これに匹敵する感度を提供できる数少ない分析手法の一つです。基本的なインフラのみで運用可能であり、ランニングコストも低いため、いくつかの主要元素をモニタリングするための有効な代替手法となります。以下では、水分析におけるscTRACE Gold電極の能力を示す、いくつかの代表的なアプリケーション例を紹介します。
飲料水中のヒ素
ヒ素は、バングラデシュで地表水の微生物汚染による疾病を回避する目的で井戸が建設された際、世界的に注目を集めました。コレラや肝炎に苦しむ代わりに、人々は慢性的なヒ素中毒に見舞われたのです。
ヒ素は発展途上国だけの問題であると考えるのはやや軽率です。実際には、ヒ素は地殻中のほぼ至る所に存在しています。しかし、 Paracelsus が述べているように、「毒になるかどうかは濃度による」のです。
したがって、重要な問題は、このヒ素のうちどれだけが地下水へと移行するかという点です。世界保健機構(WHO)は、人が飲用する水におけるヒ素の最大濃度として10 µg/Lを推奨しています。この値は、多くの国において法的基準値ともなっています。
10 µg/Lという基準値のボルタンメトリー定量では、回収率は約92%(n = 10回測定)、相対標準偏差は6.5%を示します。検出限界は1 µg/Lであり、これは法的基準値の10分の1に相当します。scTRACE Gold電極を用いたボルタンメトリーは、飲料水中のヒ素含有量をモニタリングするための、信頼性が高くコスト効率の良い方法を提供します。
詳細については、無料のアプリケーションノートをダウンロードしてください。
scTRACE Gold電極は 884 プロフェッショナル VA および 946 ポータブル VA のいずれにも使用可能です。884 プロフェッショナル VAはラボ用途向けに設計されています。本システムは非常に柔軟性が高く、ユーザーの要求に応じて構成を変更できます。また、モジュール式の構成により、手動操作から全自動システムへと後から拡張することも可能です。
一方、946 ポータブル VA アナライザーは、その名称が示すとおり、携帯用途向けに設計されています。試料採取現場において、オンサイトで直接定量を行うことが可能です。
ポータブルVA分析の詳細については、こちらをご覧ください。
表層水に含まれる銅
通常の状況では、飲料水中の銅は大きな問題とはなりません。法的基準値は比較的高く、世界保健機構(WHO)は最大濃度を2 mg/Lと推奨しています。しかし、現場の一例は、水中の銅の定量が有用となる場合があることを示しています。
蒸留アルコール飲料(例:ジン、ウイスキー、ブランデー、シュナップス)の製造では、原料を1回または複数回蒸留しますが、この工程は銅製の蒸留器で行われます。銅製装置を洗浄し、その洗浄水を河川に排出すると、環境が銅で汚染される可能性があります。
排水中の規制値は通常、飲料水よりも高く設定されていますが、適切な処理を行わずに放流した場合、銅の基準値を超える可能性があります。さらに、この洗浄による汚染は継続的ではなく周期的に発生するため、検出が難しく、特にアクセスしにくい地域では確認がさらに困難です。
このような場合、scTRACE Gold電極と946ポータブル VA アナライザーを用いたモバイル・ボルタンメトリーは、低濃度の銅を信頼性高く定量できるため、環境保護に大きく貢献します。
濃度5 µg/Lにおける10回測定の平均回収率は約107%、相対標準偏差は2%です。水中の銅は0.5 µg/Lという低濃度まで、採水地点で直接定量することが可能です。これにより、疑わしい結果が得られた場合には即座に再採水を行うことができ、さらに汚染源の特定にも役立ちます。このようにして、汚染源を特定し、責任主体を明確にする可能性が高まります。
本分析法の詳細については、以下の無料アプリケーションノートをご参照ください。
水に含まれる鉄
世界保健機構(WHO)によれば、飲料水中に通常含まれるレベルの鉄は健康上の問題を引き起こすものではありません。むしろ、鉄は人の栄養にとって必須の元素です。しかし、多くの国では最大汚染物質濃度として200 µg/L~300 µg/Lの範囲で基準値が定められています。
その理由は単純で、濃度が高くなると水の味に悪影響を及ぼし、洗濯物や衛生設備に着色(汚れ)を生じさせるためです。
検出限界10 µg/Lで、鉄のボルタンメトリー(VA)による定量は、上水中の鉄濃度をモニタリングするための簡便な方法です。20 µg/LのFeを対象としたボルタンメトリー(VA)による定量では、回収率は約91%(n = 10回測定)、相対標準偏差は1%です。
詳細については、以下より無料のアプリケーションノートをダウンロードしてください。
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このコラムでは、scTRACE Gold電極の概要と、それを用いた飲料水および環境中の重金属イオン定量について解説しています。本シリーズの他の記事では、以下の固体電極を用いた微量金属分析について取り上げています。