電気化学分析装置にはボルタンメトリー分析 (VA) が組み込まれており、電流と電圧の関係に基づいてサンプル中の微量無機イオン濃度分析やそれらの形態別分析を行うことができます。VA とともに、サイクリック ボルタンメトリー ストリッピング (CVS) とサイクリック パルス ボルタンメトリー ストリッピング (CPVS) は、有機添加物の分析に役立ち、めっき装置の連続的で干渉のない運転を可能にします。これらの分析装置は、マルチモード電極 (MME) または回転ディスク電極 (RDE) を用いて、VA または CVS/CPVS アプリケーションを実行することができます。
インダストリー4.0のコンセプトの導入が進むにつれて、より効率的で適応性を高めるために、データに大きく依存する「スマート・ファクトリー」が実現します。スマート・ファクトリーの制御室にはペタバイト級のデータが流れ込みます。しかし、実際のプロセス改善につながる貴重なデータを得ることは困難な場合があります。プロセス・アナリティクス4.0は、プロセス分析技術(PAT)のような新しい技術を導入し、高品質のデータを提供することにより、重要なビジネス上の意思決定を導きます。
インダストリー4.0とプロセスアナリティクス4.0
インダストリー 4.0 (第 4 次産業革命) の核心は、製造業における自動化とデータ収集の動きであり、接続性(connectivity)、自動化(automation)、システム統合(system integration)、ビッグ データ(big data)などのコンセプトに焦点を当てていることです。
インダストリー4.0ソリューションを導入することで、メーカーは競争力を維持し、顧客体験価値(customer experience)を向上させながら、効率性、生産性、収益性を高めることができます。マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)が実施した調査では、インダストリー4.0ソリューションの導入に成功すれば、業種を問わず、労働生産性を15~30%、処理能力を10~30%向上させる可能性があると指摘しています [1]。
プロセスアナリティクス4.0は、インダストリー4.0に類似した用語で、プロセス分析の進化が中心となります。Dhanuka P. Wasalathanthriは、Biotechnology Progress誌 [2] でこの用語を初めて使いました。この論文の中で、Wasalathanthri氏はプロセスアナリティクス4.0を「プロセス分析技術(PAT)、アッセイ自動化、データ管理、可視化、拡張現実(AR)、IoTの有用性」を含むものと定義しました。
このコラムでは、適切なPATの選択、サンプルの前処理、信頼性の高いデータの取得など、プロセスアナリティクス4.0ソリューションの導入を成功させる方法について説明します。
トピックへ直接ジャンプするには、以下をクリックしてください:
適切なプロセス分析技術 (PAT) の選択
プロセス分析技術を評価する際、最も重要な要素は、選択したソリューションが目的に適合しているかどうかです。数多くのプロセス分析装置によるソリューションは、単一の課題を解決することはできますが、どのテクノロジーが最も効果的に活用されているかを理解することで、すべての重要品質特性(CQAs)を確実にモニターし、適切にコントロールできる結果を得ることができます。
これらのプロセス分析技術 (PAT)ソリューションの詳細については、以下のオンデマンド・ウェビナー、ブログ記事、IMPACTソフトウェアのパンフレットをご覧ください。
Webinar: Process Analytics 4.0: Creating Data You Can Use
Brochure: Intelligent Metrohm Process Analytics Control Technology «IMPACT» Software
プロセス分析技術 (PAT) ソリューションの実装において、特に湿式化学分析における最も一般的な課題の 1 つは、プロセス分析装置に濃度や性状にむらのない代表サンプルを一貫して提供し続けることです。プロセス分析技術 (PAT) を複雑にさせる原因の 80% はサンプリングの問題によるものと推定されています [3]。この問題を軽減する1つの方法は、堅牢な前処理システムを設計することです。
サンプル前処理システムの目的は、安全で効率的なサンプルハンドリングを提供し、装置をダメージから保護し、稼働時間を増加させ、製造プロセスへのシームレスな統合を実現することです。サンプル前処理システムが対処しなければならない最も一般的な問題は、圧力、固形分、温度です。ほとんどの場合、サンプルパネルは複数のパラメータを同時に管理するように構築することができます。サンプルパネルは、サンプル圧力を下げ、大きな粒子が分析装置に入るのを防ぎ、サンプル フローの信頼性を低下させる可能性のあるプラントからの脈動を低減するように設計することができます。このような一般的な問題を排除することで、プロセス分析装置は24時間安定したサンプルを提供することができます。
プロセス分析技術 (PAT) の仕様を満たすために複数のパラメータを調整する必要がないならば、単機能サンプル調整システムは、カスタム設計されたサンプル パネルの優れた代替手段となります。これらの単機能サンプル調整システムには、ブローバック フィルター、オーバーフロー容器、または単純なインラインろ過機構が含まれます。
プロセス分析技術 (PAT)ソフトウェアは、サンプルパネルと組み合わせて、プロセス分析装置の外部にあるバルブ、ポンプ、その他の装置を操作するために使用することもできます。また、流量計、圧力装置、温度センサーからデータを収集し、プロセスの制御や診断を行うこともできます。外部機器を使用して、プロセス分析装置にサンプリングのタイミングやサンプリングの頻度を上げるタイミングをインテリジェントに決定させたり、プロセス分析装置の上流に問題があることをオペレーターに警告することも可能です。これらの能力は、プロセス分析技術 (PAT)ソリューションのための完全なエンド・ツー・エンドのソリューションを提供します。
サンプルの前処理の詳細については、以下のオンデマンド ウェビナーをご覧になり、当社の Web サイトで提供されているさまざまなオプションをご確認ください。
Webinar: Process Analytics 4.0: A Comprehensive Solution for Process Monitoring
貴重かつ信頼性の高いデータの取得
適切なプロセス分析技術 (PAT)ソリューションが選択され、サンプルの前処理リスクが最小化されたら、すべての重要品質特性 (CQAs) を最適化し維持するために、価値ある信頼できるデータを取得する時となります。
プロセス・アナリティクス4.0 の実装の成功例の 1 つは、NIR 分光法を用いてプロピレンオキシド (PO) などの有機溶媒の水分をモニターすることです。PO の水分レベルが高すぎると、重合段階で使用される触媒の活性が大幅に低下し、ポリプロピレンの収率が低下します。したがって、PO の水分含有量の測定は生産収益性にとって重要な指標となります。
通常、あらゆる成分の含水率は、ラボでカールフィッシャー水分測定法を用いて測定されます。この技術は製品仕様をモニターするのに十分なデータを提供できますが、周囲環境からの水分や人為的ミスの影響を受ける可能性があります。熟練した分析技術者が、毎日何度も測定を行い、製造プロセスが円滑に進むように測定結果を出さなければなりません。インラインNIRスペクトロスコピーを用いれば、入荷したPOの水分含有量を1分以内に測定することができ、この揮発性有毒化合物の手動サンプリング作業の頻度を減らすことで、安全上の問題を軽減することができます。
濃度測定のためのNIR分光法は、堅牢な予測モデルの開発に依存しています。このようなNIRモデルを開発するために、分析範囲をカバーするサンプルについてカールフィッシャー水分測定法を用いてラボデータを収集します。それぞれの測定結果は同じサンプルのNIRスペクトルと相関を持ちます。
予測モデルの開発後、PO中の水分は11~120 mg/L (ppm)の範囲で測定できるようになり、廃棄物コストの削減と、24時間リアルタイム分析が可能になりました。プロセス分析装置によるルーチン分析中、ソフトウェアは、迅速な測定結果の収集と管理値外警告のための即時データ処理を行うため、お客様は先を見越したプロセス決定を行い、最終製品の品質を向上させることができます。
このケーススタディの詳細については、以下のオンデマンド・ウェビナーのリンクをご覧ください。
Webinar: Process Analytics 4.0: A Turnkey Solution for Moisture Analysis
結論
プロセス・アナリティクス4.0ソリューションの導入は、時に困難な作業に思えるかもしれません。しかし、適切なプロセス分析技術 (PAT)ソリューションとソフトウェアを選択し、適切なサンプルリング機構を用いれば、成功は容易に得られます。これらのソリューションにより、製造工場は、自律的な意思決定手順を可能にし、リアルタイムでプロセスをモニターし、製品品質を守ることができ、プロセス・アナリティクス4.0によるスマート・ファクトリーを確立することができます。
メトロームは、世界で最も信頼されている化学分析機器メーカーの1つです。45年以上の経験を持つメトローム・プロセス・アナリティクスは、同じメトロームのラボ技術を活用し、専用のカスタムプロセスソリューションを提供することにより、お客様の収益向上に貢献しています。
参考文献
[1] Gregolinska, E.; Khanam, R.; Lefort, F.; et al. Capturing the true value of Industry 4.0. Industry 4.0: Digital transformation in manufacturing | McKinsey. https://www.mckinsey.com/capabilities/operations/our-insights/capturing-the-true-value-of-industry-four-point-zero (accessed 2023-02-23).
[2] Wasalathanthri, D. P.; Shah, R.; Ding, J.; et al. Process Analytics 4.0: A Paradigm Shift in Rapid Analytics for Biologics Development. Biotechnology Progress 2021, 37 (4), e3177. DOI:10.1002/btpr.3177
[3] Phillips, S. 3 Rules for Analyzer Accuracy. Swagelok Fluid System Blog. https://www.swagelok.com/en/blog/sampling-system-issues-that-can-cost-you (accessed 2023-02-27).
参考資料
Brochure: 2060 TI Process Analyzer
Brochure: 2060 IC Process Analyzer
Brochure: 2060 The NIR Analyzer
Application Note: Inline process monitoring of the moisture content in propylene oxide