AN-EC-040
2026-04
【技術資料】ルテニウム錯体を用いた電気化学発光によるフェンタニル測定
Simple system for the detection of fentanyl using electrochemiluminescence
概要
電気化学発光(ECL)は、電気化学的プロセスと発光を組み合わせた高感度な分析手法です。汎用性と感度に優れ、幅広いルミノフォアに対応できることから、臨床分析、環境検出、バイオ分析研究に利用されています。
フェンタニルは、鎮痛作用と麻酔作用を目的として使用される合成オピオイドです。モルヒネの約100倍、ヘロインの約50倍の効力があります。医療用途がある一方で、違法なフェンタニルが闇市場で日常的に見つかっており、世界的な健康問題の深刻化につながっています。
現在のフェンタニル検出方法の多くは、時間がかかる、費用が高い、または複雑な装置が必要です。本アプリケーションノートでは、フェンタニルの検出に向けて、迅速で利用しやすく、費用対効果の高い代替手段となるECL法をご紹介します。
フェンタニル薬物のECL検出
フェンタニル CII(USP標準品)、トリス(2,2'-ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物(Rubpy、シグマ アルドリッチ)、塩化ナトリウム(シグマ アルドリッチ)、塩化カリウム(シグマ アルドリッチ)、リン酸水素二ナトリウム(シグマ アルドリッチ)、およびリン酸二水素カリウム(シグマ アルドリッチ)は、受け取ったまま使用しました。すべての化学物質は分析グレードでした。 水溶液は、超純水(Direct-QTM 5システム、ミリポア)を用いて調製しました。
ECL系は、ルミノフォアとしてのRubpyと、共反応物としてのフェンタニルを、0.1 mol/L PBS水溶液緩衝液(pH 6)中で用いる構成です。Rubpyの電気化学的酸化によって一連の化学反応が始まり、620 nmで発光が生じます。この発光はフェンタニル濃度に依存するため、この化合物の検出が可能になります。
このオピオイドの存在下でのRubpyの発光に関する初期評価と特性評価は、マイクロ分光器セルを用いて実施しました。ECLシグナルを最適化するため、金SPEとPBS pH 6緩衝溶液を用いて、電位を0.40 Vから1.20 Vまで掃引しました。マイクロ分光器検出器は可視スペクトルを取得し、検討対象の系を理解するうえで有用な情報を提供します。図2は、共反応物としてフェンタニルが存在することによる、620 nmでのRubpyの発光を裏付けています。フェンタニルを含まないブランク実験では、ECLバンドは認められません。
Rubpyからの発光が確認された後、より低濃度のフェンタニルを分析するために、SpectroECLとフォトダイオードセルを使用しました。マイクロ分光器セルを用いた実験と同じ電気化学条件を使用しました。フォトダイオードセルで得られるシグナルは、可視域全体にわたる発光スペクトルではなく、ECL発光の総量(図3の緑色の線)です。同時に、電気化学シグナルも記録しました(図3の青色の線)。この検出器は波長を区別しませんが、高い感度を備えています。ECLは0.85 Vより高い電位で増加し、1.00 V付近で最大に達します。
1.00 VにおけるECLシグナルの高さを測定し、0001 mmol/Lから0.01 mmol/Lまでのフェンタニルの検量線を作成しました(図4)。高い相関係数(R2 = 0.998)は、この濃度範囲でフェンタニルを検出するECL法の良好な直線性と感度を裏付けています。
まとめ
ECLは、さまざまなルミノフォアの検討において信頼性の高い結果をもたらす強力な手法です。ECL発光スペクトルを得るためのマイクロ分光器セルと、ECL総強度を測定して感度を高めるフォトダイオード検出器を組み合わせることで、分析対象の系を明確に理解でき、目的分析対象物の定量も支援できます。
本アプリケーションノートでは、実証実験として、フェンタニルの存在下でのRubpyに特徴的なECL発光に基づくフェンタニルの検出を示しました。ECLシグナルは溶液中のフェンタニル濃度に依存するため、得られた結果は、オピオイド検出用ECLセンサーの開発に向けた新たな道を開くものです。