AN-NIR-122
2024-09
近赤外分析計(OMNIS NIRアナライザー)による乳糖中の水分含量の測定
Fast, non-destructive determination of water with NIRS
概要
乳糖は、医薬品分野において重要な賦形剤です。医薬品の約60~70%には乳糖が含まれており[1]、容積比で見ても最も広く使用されている医薬品用賦形剤の一つです。乳糖は、錠剤製剤におけるバルク充填剤として用いられるほか、製剤に十分な機械的強度を付与するための結合剤として、また製造工程中の粉体の流動性を改善する目的でも使用されます。乳糖中の水分含有量が高い場合、粒子同士の付着や凝集を引き起こしやすくなり、分離しにくく硬い凝集塊を形成する可能性が高くなります。このような理由から、USPでは乳糖水和物中の水分含有量を4.5~5.5%の範囲に規定しています[2]。乳糖中の水分分析は、通常、乾燥法などの時間を要する手法によって行われます。これに対し、近赤外分光法(NIRS)は、迅速かつ非破壊で測定可能な代替手法です。本アプリケーションノートでは、NIRSを用いた乳糖中の水分含有量の測定について紹介します。
実験
本研究では、含水量を変化させた乳糖試料を測定し、水分含有量を定量するための近赤外分光法(NIRS)検量線モデルを作成しました。 乳糖水和物試料は、一部の試料はオーブンを用いて乾燥処理を行い、別の試料については水分を添加することにより調整しました。フレキシブルホルダーをOMNIS NIRSアナライザー(図1)にセットして、測定は19 mmバイアルに充填した試料を用い、拡散反射モード(測定波長範囲:1000~2250 nm)で行いました。スペクトルデータの取得および検量線モデルの構築は、OMNISソフトウェアを用いて行いました。
| 装置名 | 商品番号 |
|---|---|
| OMNIS NIR Analyzer Solid | 2.1071.0010 |
| Disposible vials, 19 mm, reflection | 6.7402.120 |
| Flexible holder OMNIS NIR | 6.07402.300 |
| OMNIS Stand-Alone license | 6.06003.010 |
| Quant Development software license | 6.06008.002 |
結果
測定したNIRスペクトル(図2)を用いて、乳糖中の水分含有量を定量するための検量線モデルを作成しました。検量線モデルの性能評価には、NIRによる予測値と基準値との関係を示す相関図を用い、両者の間に非常に高い相関が得られることを確認しました(図3)。
各種性能指標(Figure of Merit:FOM)は、検量線モデルで期待される分析精度を示すとともに、日常的なルーチン分析への適用可能性の評価として用いました。
作成した検量線モデルを用いて、カールフィッシャー(KF)オーブン法(Hydranal水標準)により基準値が求められている乳糖水和物試料(含水量:5.10 ± 0.04%)の水分含有量を予測しました。その結果を表2に示します。
Result water content in lactose
| R2 | SEC (%) | SECV (%) |
|---|---|---|
| 0.977 | 0.12 | 0.14 |
| NIR予測結果 | |
|---|---|
| 水分量 (%) | 5.1380 |
| SD (rel) in % | 0.029 |
結論
このアプリケーションでは、近赤外分光法(NIRS)を用いることにより、乳糖中の含水量を迅速かつ容易に決定できることを示しました。NIR分光法は、従来の標準的な試験法に代わる、高速で費用対効果が高く、かつ高精度な分析手法を提供します。さらに、NIRS分析は非破壊で試薬を一切必要とせず、わずか数秒で結果を得ることが可能です。
参考文献
- Hebbink, G. A.; Dickhoff, B. H. J. Chapter 5 - Application of Lactose in the Pharmaceutical Industry. In Lactose; Paques, M., Lindner, C., Eds.; Academic Press, 2019; pp 175–229. DOI:10.1016/B978-0-12-811720-0.00005-2
- Lactose Monohydrate. DOI:10.31003/USPNF_M44190_04_01