二酸化炭素 (CO2) 排出量を削減するには、従来の燃料駆動車をバッテリー駆動車に置き換えることが不可欠です。 温室効果ガスは化石燃料の燃焼により発生するため、大気への流入を制限すると地球温暖化にも影響します。 バッテリーの研究は現在、より高いエネルギー密度と電力密度、効率的なエネルギー貯蔵を備えた新しい材料の発見に焦点を当てています。
実用的なバッテリーや電池を新たに開発するには、さまざまの重要な項目を決める必要があります。このPart1では、メトロームの分析装置を使用したバッテリーや電池材料の測定について紹介します。
Part1では、以下の点について解説しています:
リチウムイオン電池の中身は何?
リチウムイオン電池は、現在最も入手しやすい一般的な充電式電池です。電池はアノード(マイナス極)とカソード(プラス極)で構成されています。電解質は、この2極の間でリチウムイオンの形で電荷移動を促進します。一方、断面図1に示したように、アノードカソードの間に配置されたセパレーターは短絡を防ぎます。
アノード(負極)は、集電箔と呼ばれる銅箔の上にリチウムを含むグラファイトを塗布して作られ、カソード(正極)は、集電箔であるアルミニウム箔の上にリチウムイオンが点在する金属酸化物が塗布してある構造になっています。 カソード材料に使用される最も一般的な遷移金属は、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄です。 電解質は、電荷移動を容易にするリチウム塩(例えば六フッ化リン酸リチウム)を含む無水非プロトン性溶媒です。セパレータは多孔質材料でできており、短絡を防ぐ絶縁体として機能します。 これらすべての構造は、バッテリーの特性に大きな影響を与えます。
ここからは、メトロームの装置で測定できる測定項目とその分析方法を見ていきましょう。
電池原材料に含まれる水分について
水は導電性塩 (LiPF6 など) と反応して有毒なフッ化水素酸を生成するため、リチウムイオン電池に水分が含まれないようにする必要があります (H2O の濃度は 20 mg/kg 未満)。 高感度電量法カールフィッシャー水分法は、微量の水分を測定するための理想的な測定方法です。 固体の水分測定は、水分気化装置を使用して測定します。サンプルに含まれる水分は気化して測定セルへ移動し、そこでカールフィッシャー水分計で測定されます。
水分気化法の原理と利点について、以下の記事で詳しく解説しています。(英語)
以下の電池構造部分で水分測定を行う方法について、技術資料をダウンロードできます。
- リチウムイオン電池の製造原料
- 正極および負極の電極塗布スラリー成分
- 塗布された正極および負極箔、セパレータ箔、パック箔層
- リチウムイオン電池用電解液
以下の金属含有物、金属酸化物は電位差滴定で測定できます:
- 溶液中のニッケル、コバルト、マンガン
- 四酸化コバルト (Co3O4)、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムなどのカソード材料中のニッケル、コバルト、マンガン
ニッケル、コバルト、マンガンの混合物の電位差滴定については、以下のアプリケーション ノートをご覧ください。
Analysis of Li-ion battery cathode materials made from Co, Ni, and Mn
リチウム塩の分析
電位差自動滴定は、リチウム塩の純度測定にも適しています。
水酸化リチウムや炭酸リチウムの場合、純度は水系の酸塩基滴定で行います。この手法で、水酸化リチウム中の炭酸塩不純物を測定することも可能です。
水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの測定については、以下のアプリケーションのトをご覧ください。
塩化リチウムと硝酸リチウムの測定では、エタノール溶液中でのリチウムとフッ化物との沈殿反応を利用して、リチウムを直接滴定します。 塩化リチウムおよび硝酸リチウムの分析方法の詳細については、以下のアプリケーションノートをご覧ください。
Lithium in brine – Reliable and inexpensive determination by potentiometric titration
Assay of lithium nitrate – Reliable and fully automated determination by potentiometric titration
リチウム塩 (およびその濃度) と一緒に存在する可能性のある他の陽イオンの測定についても、バッテリー産業では高い関心があります。 さまざまな陽イオン(ナトリウム、アンモニウム、カルシウムなど)は、イオンクロマトグラフィー(IC)を使用して測定可能です。 IC は、広い濃度範囲で陰イオンと陽イオンを定量化できる効率的で正確なマルチ分析方法です。
図 2 のクロマトグラムは、リチウム鉱石処理工程におけるリチウム、ナトリウム、およびカルシウムのピークを示しています。
詳しい内容は、以下のアプリケーションノードをご覧ください。
溶出イオンと分解生成物の測定
リチウムイオン電池の開発と最適化における研究開発で、特に関心の高い項目に、電解液中のさまざまな成分のイオン(リチウム、フッ化物、六フッ化リン酸塩など)の含有量があります。イオンクロマトグラフィーにより、電解液中の分解生成物、や完成した電池などから溶出する陰イオンと陽イオンを測定できます。 さらに、メトローム自動前処理システム(«MISP»)技術を使用して、サンプルの濃度調製(例:予備濃縮、希釈、ろ過)を自動化することができます。
イオンクロマトグラフィーを利用したバッテリーの研究開発については、以下のアプリケーションがあります。
まとめ
この記事では、バッテリーの研究開発で利用できるメトロームの分析装置をご紹介しました。Part2では、電池とその原材料の電気化学特性について特集します。