プラントの管理者は、日々数多くの難しい問題に直面し、様々な重要な判断を下さなくてはいけません。その中には、プロセスモニタリングや品質管理のために分析装置をオンライン/インライン(プロセス内に直接配置)で設置するか、またはオフライン(例:ラボ施設内)で設置するかという問題も含まれます。知識は力であり、すべての関連情報を把握することは、管理者が自社のプロセス状況に基づいて賢明な判断を下すために重要です。最終的には、すべてのプロセスが異なるため、カスタマイズされた分析ソリューションが必要です。この点の、メトロームの解決策をご紹介します。このコラムでは、オンライン/インライン分析計の導入、あるいはオフラインのラボ分析計を使用するかどうか決定する前に、プラント管理者が考慮すべき最も重要な要素について解説します。
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データのトレーサビリティとコミュニケーション
プラント管理者やオペレーターは、常にプロセスについて最新情報を把握している必要があります。生産プラント内で複数の異なる測定技術を扱ったり、複数のソースから得られるデータの累積的な傾向を分析することは、非常に困難な場合があります。
プロセス分析計からのデータ
プロセス分析計は、定義されたプロセス要件に基づいて即座に対応できるよう、分析データを蓄積・評価し、賢く利用することが可能です。メトロームのプロセス分析計は、さまざまな目的(例:化学薬品の適切な添加)のために、DCS/PLC/SCADAへ結果を直接フィードバックすることで、プロセスの制御と最適化を支援します。完全に統合されたIMPACTソフトウェアがデータ収集を担当し、必要に応じて警告信号やアラームを発して、直ちに是正措置を講じられるようにします。
ラボ用分析装置からのデータ
ラボ用分析計を使用する場合、最新のデータをプラント制御室に伝えることは、そう簡単ではありません。これを実現するには、複数のソフトウェア統合プラットフォームに投資する必要があります。このため追加コストが発生するだけでなく、すべての要件を満たし、関係者全員の承認を得るのも困難な作業です。
プロセスが比較的単純で安定しており、変動が少ない場合は、頻繁な分析は不要で、結果は主に傾向の監視に使用されます。この場合、データを直接制御室に送る必要はありません。ラボ用分析計が適切な選択肢となる可能性があります。プロセス分析計と同様の測定精度を提供しつつ、1台で複数の分析を行えるため、投資対効果(ROI)が高いという利点もあります。
プロセス自動化の利点については、前回のブログ記事でさらに詳しくご紹介しています。
高頻度の測定
シフトごと、または1日に複数回のサンプル前処理が必要な分析が求められる場合、サンプル前処理パネルを備えたオンラインまたはインライン分析計が最も理想的な解決策です。
リアルタイムの結果は、費用のかかる遅延を避け、プロセスの自動かつ連続的な制御に対して迅速なフィードバックを提供します。分析頻度が高いほど、現在のプロセス状態をより詳細に把握できるため、規格外の製品を出荷するリスクや予定外のダウンタイムが発生する可能性を減らすことができます(図1)。
さらに、オンラインプロセス分析計は「if」条件式に基づく高度な条件付きアクションをプログラムすることができ、プロセス制御に革新をもたらします。重要なパラメータをリアルタイムで継続的にモニタリングすることで、プロセスオペレーターが最も重要な場面でより的確な判断を行えるようにします。モニタリング中のプロセスが指定された管理範囲内にある場合、プロセス分析計は自動的にサンプリング頻度を減らし、効率を最適化しランニングコストを削減します。
同時に、プロセスが管理範囲の上・下限に近づくと、プロセス分析計は素早く反応し、分析頻度を自動的に増加させてさらに多くのデータを取得します。これにより早期警告が可能となり、状況が悪化する前に素早く是正措置を取ることができます。
このプロセス条件の変動に適応する能力により、オンラインプロセス分析計は生産性を向上させ、欠陥や廃棄を最小限に抑え(つまりコストを削減し)、プロセスの安定性を最大限維持します。
さらに、メトロームのプロセス分析計は、結果を暗号化されたデータベースに保存するよう設計されており、すべての収集データは完全に追跡可能でデータ改ざんを防止します。電力バッファーと制御されたシャットダウンシーケンスによりデータの破損を防止します。
オペレーティングシステムは組み込み式のため、ユーザーからのアクセスをブロックして保護を強化しています。
オンライン/インラインプロセス分析を使用した際の利点:
- 正確なサンプリングによる実際のプロセス条件の把握
- ヒューマンエラーを無くすことでミスを低減
- 迅速な測定と結果のフィードバックにより製品廃棄を低減
- 再処理の防止
低頻度の測定
一方で、特定のパラメータを生産シフトごと、または1日1回、もしくはそれ以下の頻度で測定する場合、品質管理の目的ではラボ分析計を使用する方が理にかなっています。ただし、プロセス全体の状況や環境にも注意が必要です。手動サンプリングは、サンプルを近くのラボに運搬して保管し、最終的にテストするまでの時間がかかるため、処理速度がかなり遅くなります。この時間の遅延により、サンプルは現在のプロセス条件(pH、温度、水分量など)をもはや現在のプロセス条件を正確に反映していないことになります。
オフラインでのラボ分析用のサンプルは、オンライン/インライン分析に比べて頻度が大幅に低いため、化学処理や補充の際に過剰補正が発生する場合があります。
オフラインでのラボ分析は課題もありますが、プロセスへの貴重な情報を提供する手段でもあります。手動サンプリングは多少の誤差を生む可能性がありますが、慎重に手順に従い、熟練した分析者が行うことで多くの場合、正確な結果につながります。また、オフライン環境での分析頻度が低い分、丁寧な検査が可能で、詳細で包括的な結果を得ることができます。
まとめ
オンラインおよびインラインのプロセス分析計には、リアルタイムデータの提供や測定間の一貫性という点で特に利点があります。しかし、適切に実行および管理されれば、ラボ分析も依然として信頼性の高い貴重な情報を提供し、産業プロセスの管理と最適化に役立ちます。
安全性
危険な化学物質との接触は危険であり、最小限に抑えるべきです。プラント内の危険なエリアでは、曝露を防ぎ、人の介入をできるだけ避けることが最善策です。オフライン分析では、オンライン分析に比べて、危険な化学物質との接触が増えるため、好ましくありません。
そのような状況でオンラインまたはインラインのプロセス分析計を使用することで、手動処理の工程がなくなり、危険な化学物質への曝露リスクが軽減されます。さらに、サンプリングは定期的に行うことができ、手動の方法では実現できない頻度で実施するようにプログラムすることも可能です。これにより、オンラインまたはインラインプロセス分析計を使用することで、より優れたプロセス制御が実現します。
- サンプリングおよびラボ分析中の危険な化学物質への作業者の曝露を回避
- 危険なサンプル成分の早期検出によるメリット
- 防爆型プロセス分析計を用いて防爆エリアでの分析が可能
メトロームの防爆プロセスソリューションについては、詳しくはこちらをご覧ください。
分析が行われる場所は、使用する機器の選択に大きな影響を与えることがあります。例えば、入荷する原材料の同定を行うために、ラボ分析計が以前は当然の選択肢でした。しかし、作業負荷やリードタイムを考慮すると、メトローム ハンドヘルドラマン分光計(MIRA、図2)のような使いやすい携帯型ラマン分光計を活用することで、より効率を高めることができます。
これらの携帯型ラマン分光計は、物質の同定や品質を受入時(例:倉庫の受入ドック)に、ボトルや袋、その他の容器に入ったままで直接測定することができます。したがって、プロセスが妨げられることはありません。
施設内の複数の工程で品質管理パラメータの測定には、オンライン/インライン分析計が最適なソリューションです。分析ごとのコストが低く、投資対効果(ROI)が高くなります。自動化されたプロセス分析ソリューションを使用しない場合、より多くのラボ分析者や機器が必要になりますが、十分な教育を受けた熟練したラボ技術者を見つけることは、難かしくコストもかかります。
メトロームのハンドヘルドラマン分光計の詳細については、こちらをご覧ください。
実際の現場での分析
安安全性に関するセクションでは、防爆エリアでプロセス分析計を使用することの重要性について説明しました。このセクションでは、生産設備で遭遇する可能性のある物理的なスペースの問題と、サンプリングを行う必要がある場合の対処方法について説明します。
時には、工業プラントには自動分析計システムを設置するためのスペースが非常に限られていることがあります。そのため、ラボ分析計が好まれることがあり、これはラボのレイアウトの自由度が高いためです。
メトロームのプロセス分析計は、この課題を解決するためにリモートキャビネットを提供しています。2060プラットフォームの柔軟なレイアウトのおかげで、分析キャビネットはサンプリングポイントの近くに取り付けることができ、制御用ヒューマンインターフェースをスペースに余裕のある場所に設置することができます(図3)。
プロセス分析計とサンプル測定ポイント間の距離はかなり離れることがあります。例えば、2060 NIRアナライザーを使用することで、1つの近赤外(NIR)キャビネットにつき最大5つのサンプルポイントをモニタリングでき、分析キャビネットから百メートル離れた場所でも対応可能です。この仕様では、シングルファイバーケーブルを利用することで、サンプルポイントと分析キャビネットをシームレスに接続できます。
また、インラインセンサーもスペースの制約に依存しません。例えば、ProTrode pH電極はパイプ、反応器、またはタンクに直接取り付けることができます。統合されたVarioPinセンサーコネクタは、電極から2060プロセスアナライザーや施設内の他の場所にあるトランスミッターへ信頼性の高い信号伝送を実現します。
インラインpH電極の利点については、前回のブログ記事でさらに詳しくご紹介しています。
まとめ
オンライン/インライン分析とオフライン分析はプラントにおいて重要な役割を果たしていることは明らかです。それぞれの分析技術は状況に応じた利点があります。どちらの分析技術を導入するかは、各プラントの具体的なニーズや状況に依存します。
ラボ用分析計がプロセス分析計より優れているわけではなく、その逆も然りです。それぞれの用途は独自のものであり、どちらの選択をしても、メトロームはラボ内でもプロセス内でも、あなたの課題を解決するための適切なソリューションを提供します。