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このアプリケーションノートではハンドヘルドラマン分析計を用いて、D- ガラクトース、D- グルコース、D- マルトース、D- マンノース、D- ソルビトール、フラクトース、スクロース、イノシトールを明確に判別可能なライブラリーを構築し、迅速に非破壊で判別分析可能である事例を紹介します。測定にはMira を用いて、サンプル前処理不要で明確に迅速な糖類の判別分析が可能であることが示されました。

Miraにて測定されたグルコースとフラクトースのラマンスペクトル
図1. Miraにて測定されたグルコースとフラクトースのラマンスペクトル

近年、日常生活のみならず工業分野においても糖類は必須のものとなっている。糖類は化学工業においては反応用原料として、食品工業では味覚、フレーバー用として、製薬業界では防腐剤、安定化剤、苦味マスキング剤等として多く使用されている。糖類は糖の総称であり、単糖、二糖、多糖の3つの一般的な糖類グループがある。単糖類は最も単純な炭水化物構造であり、他の糖類群の構成要素となる。一般的な単糖はフルクトース(果糖)、グルコース(デキストロース)、ガラクトース(乳糖)である。二糖は、2つの単糖または2つの糖部分を含む構造のものとなり、 最も一般的なものは、スクロース(グルコース+フルクトース)、ラクトース(ガラクトース+グルコース)、マルトース(グルコース+グルコース)となる。 対照的に、多糖類は重合した単糖類または二糖類の反復パターン構造になっていて、セルロース、デンプン、およびグリコーゲンといったものになる。
今回の検討では、このような似た糖類の構造判別には、迅速な分析法としてはHPLC、FT-IR、及び時間のかかる湿式分析が化学的同定法として用いられている。

ラマンスペクトルの測定はMiraにて自動積算モード(露光時間を自動的に決定)、785nmレーザーを照射、オービタル水平走査(ORS)で行った。糖類のサンプルはポリ袋に入れ、短焦点チップ(SWD、0.8mm先焦点)を用いて袋越しに測定を行った。

このオービタル水平走査(ORS)テクニックを用いることにより、測定時の正確性、再現性を飛躍的に向上させ、サンプル表面の広いエリアの測定が可能となる。


D-ガラクトース、D-グルコース、D-マルトース、D-マンノース、D-ソルビトール、フラクトース、スクロース、イノシトールを測定後、専用Mira Calソフトウェアを用いてライブラリー作成を行った。

Miraにて測定された各糖のラマンスペクトル
図2. Miraにて測定された各糖のラマンスペクトル

ライブラリーに使用した糖類のラマンスペクトルを図1に示す。各糖がそれぞれに特徴的なピークを有していることが確認され、Miraの測定範囲がそれぞれ固有のピークを含むスペクトル領域400~1800cm-1をカバーしていて、糖類の測定に適切であることが証明された。

図2は、Mira(ORS技術を用いて)が粉末または結晶試料の高感度測定が可能で、より構造的に類似した糖の明確な判別が可能であることを示す。フルクトースであるケトースとグルコースとアルドースは、同じ化学組成を有する単糖であるが、これらの2つの化合物は、スペクトル相関値に基づいてMiraで明確に判別することができた。

例えば、グルコースとフラクトースを比較する場合、またはその逆の場合に相関値を見ると、同じ相関値0.15を見ることができる。これは、Miraがラマン分光計としての高い選択性を有していると言え、同じことが他の糖類にも言える。
未知試料のスペクトルがライブラリー中の基準スペクトルとどれほど良好に一致しているかを示すスペクトル相関値は、全ての試料において0.99より高く、また他のスペクトルとの相関値は全て0.4未満であった 。

図3. Miraによる各糖の判別結果の相関値関係

このアプリケーションノートでは、ハンドヘルドラマンが、さまざまな業界で使用されている糖類及び糖誘導体の同定および確認試験が可能であることが示された

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