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イオンクロマトグラフで、凍結解凍後の試料を分析する際の注意点と適切な取扱い方法を
ご隠居さんが詳しく解説しています。

シーズン1 その貳拾貳(二十二)

「ご隠居さんはいらっしゃいますか〜」


「ん。寛さんかな。鍵はかかってないから,入っといでぇ〜」

 

「おじゃましま〜す。ご隠居さん。どうしたんですか?炬燵にくるまっちゃって,,,」

 

「一旦入ったら出れなくなっちまった。やけに冷えるけど,白いもんは落ちてきてないかい?」 

「雪ですか?パラパラと来てますよ。先日ね,富山の実家に帰ったんで,白海老の昆布締めと,蒲鉾を買ってきましたけど,,,」 

「嬉しいね。共に好物ですよ。流しの下に,手取川があるんで持ってきておくれ。山葵もですよ。」

「昼真っからですか?一寸,ご意見を頂きたいことがあるんですけど,,,」
 

「ご意見?ですかぁ〜。まぁ,いいやね。さっさと支度してくださいな。一寸くらい入ったって,耳は聞こえるし,頭も回りますよ。結構酔っぱらっても回るけどね。で,話って何だい?」

「実は,試料は凍らしちゃっていいんですかね?」

「何だい,凍らすって?」

 

「イオンクロマトの試料ですよ。雪を採りに行ったついでに,河川水と地下水を大量に採ってきたらしんですけど,保存するのに雪と一緒に冷凍庫に入れちゃったらしんです。」 

 

「う〜ん。やったことがないね。凍らすとどうなるんだろ。待ってくださいよ!」

雪や氷の中のイオンを測るってのはあるんですけど,溶けているものを凍らして,それを測るなんてことは普通はやりませんよね。鼠のおしっこや組織なんかは冷凍しますけど,環境試料はやったことがないので即答はできません。ゆっくり考えてみましょう。 

南極の氷で水割りを作って飲んだことがありますけど,塩っぱくはないですね。塩水が凍るんじゃなくて,水だけが凍るからですよね。自分家でシャーベットを作ろうとして,ジュースを冷凍庫に入れても,水っぽいもんしかできなくて美味しくはないですね。これも,同じですよね。 

ということは,河川水を凍らしても同じだから,水だけが凍っているってことですよね。イオンはどうなってるんだろ?何となくですが,急速冷凍すれば巻き込 まれて氷の中に居そうな気がするんだが,ゆっくり凍らせると外に出てきちゃうじゃないかな,,,だけど,何処に行っちゃうんだろね?容器は密閉容器だろう し,温度も低いんで飛んでなくなる何てことは無いでしょうね。うーん,難しいね。河川水や地下水だから濃度はppmってところですよね。この位薄いと,氷 の中にいるんですかね?氷の表面にへばり付いて居るってのも考えられるんだけど,,,
 

正直いって判りません。お手上げ,降参です。えっ,許しちゃくれないんですか?厳しいねぇ。
 

どうなっているかはまったく判りませんが,どうしたらいいかは判りますよ。昔,鼠のおしっこや植物細胞液なんてのを沢山測らされたことがあるんでね。こんなことがありましたよ。

鼠のおしっこや植物細胞液なんてのはほんの少ししか採れません。室温で放っておくと腐っちまうから,当然冷凍保存です。ある意味貴重な試料ですんで,一度に溶かして失敗すると取り返しが付かなくなるんで,予備試験の時には一寸溶かしては測定して,何てことやったんですよ。

阿呆 (阿房) の浅知恵でしたね。測るたんび値が違うんですね。極端に違うって程じゃないんだけど,バラツキが大きいんですよ。凍らしたものの中のイオンの分布っての は,厳密に見ると均一じゃないってことなんですかね。最初に溶けたほうが濃度が高いってのであれば,氷の表面にへばり付いているっていえるんだけど,必ず しもそうじゃなかったように思うし,試料そのものの量が少なかったから何ともいえません。はっきりしているのは,氷の塊が残っている時と,全部を溶かして よく振った時とじゃ,値が微妙に違っていたってことです。ということで,それからは,氷を完全に溶かして室温に戻した後,十分に振って測定するようにしま したね。 

 

河川水や地下水ではどうなるのか判りませんが,多分同じなんじゃないですかね。一旦凍らしちゃったら,開栓せずに解凍し,室温に戻し,十分に振って試料に しなきゃいけません。雪の場合も,完全溶解して測定するんだと思いますけどね。それと,河川水や地下水ですから,解凍後は必ず濾過をしなければいけませんよ。  

次いでですんで,河川水や地下水等の試料の保管について一言。

通常,河川水や地下水等の環境水は採取したら速やかに濾過をします。粒子だけでなく,微生物が入っているからです。放っておくと腐ってしまいま すよ。濾過は孔径0.45 µmのメンブランフィルターを用いるのがいいんですが,実際には目詰まりが酷くって,直径47 mmでも500〜1000 mL位しか濾過できないなんてことがあります。このような場合には,孔径5〜10 µmのろ紙を用いて粗濾過した後,孔径0.45 µmのメンブランフィルターで濾過してください。濾過には,ファンネル型の濾過器と濾過瓶を使うんですが,いちいち濾過瓶を洗うのも面倒だし,汚染も心配 なので,吸引鐘を用いると直接試料瓶に入れることができます。濾過した試料はできるだけ早い内に測定をしなければなりませんが,やむを得ない場合には冷蔵 保存します。この場合,しっかり密栓をし,必ず遮光するようにしてくださいね。当然,長期保管は禁物です。

 

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今日はまともに答えることができませんでしたが,白海老も蒲鉾も,手取川も絶品でしたので満足な一日でしたね。ただ,富山 の人には申し訳ないけど,蒲鉾の昆布巻きのほうは今一ですね。お酒もまだ残っていますので,寛さん相手にもう少しやりましょうかな。こんな寒い日は,炬燵 にくるまって一杯ってのが一番ですね。白いものが混じってきているってことですから,,,

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※本コラムは本社移転前に書かれたため、現在のメトロームジャパンの所在地とは異なります。

 

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