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本アプリケーションノートでは、Mira M-1 に代表されるハンドヘルドラマン分光計が、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩といった塩類の識別および区別に有効であることを示しております。本測定の主な焦点は、これらの塩類のラマン分光による識別において、陽イオン成分および結晶水が及ぼす影響を評価することにあります。

 

無機塩類は、陰イオン部分が共通である一方で、陽イオン部分が異なる場合が多く見られます。また、多くの塩類は、塩に結合している水分子の数によって識別することが可能です。

本測定では、塩の陽イオン部分および陰イオン部分に結合する水分子の数がラマンスペクトルに与える影響を調査いたしました。塩類間の違いは非常にわずかであるものの、携帯型ラマン分光計を用いて取得されたスペクトルには十分な差異が認められ、それぞれを識別することが可能であることが示されました。

図 1. 各種炭酸塩の重ね合わせラマンスペクトル

すべてのスペクトルは、Mira M-1 ラマン分光計を用いて自動取得モードで測定されました。すなわち、積分時間は自動的に設定されました。測定には785 nmのレーザー波長と、軌道ラスタースキャン技術(Orbital Raster Scan Technologie, ORS)を使用しました。バイアルホルダーアダプターを用いて小型バイアル内のサンプルを測定しました。今回は、ラマン活性を示す3種類の陰イオン、すなわち炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩が選ばれ、塩の陽イオン部分を変化させることで生じるスペクトルの変化を調査しました。

図 2. 各種炭酸塩のメインピーク

図2は、ラマンスペクトルにおける炭酸塩のピークが、対陽イオンの種類によってどのようにシフトするかを示しております。このピークのシフトは十分に顕著であり、さまざまな炭酸塩を識別するために利用可能です(ただし、炭酸アンモニウムと重炭酸アンモニウムの間では差異が非常に小さいため、識別は困難です)。

同様の結果は各種リン酸塩にも見られ、スペクトルの違いはそれらを識別する上で有用であることが確認されました(図3を参照)。ただし、カリウムイオンとアンモニウムイオンはイオン半径が類似しているため、リン酸二アンモニウムとリン酸二カリウムの識別には一部困難が伴います。

図 3. リン酸塩スペクトルの主な違い

分析した硫酸塩もそれぞれ顕著に異なり、携帯型ラマン分光計Mira M-1を用いて明確に識別することが可能であることが示されました(図4を参照)。ただし、CuSO4 x 7 H2O, K2SO4, SnSO4, および ZnSO4 x 7 H2Oは、スペクトルが類似しているため、明確な識別は困難でした。

図 4. 硫酸塩スペクトルの主な違い

一般的に、Mira M-1のような携帯型ラマン分光計は、同じ陰イオン部分を持つ塩類であっても、無機材料の識別に非常に有用な手法です。塩の陽イオン部分の違いが、Mira M-1携帯型ラマン分光計による多くの塩類の明確な識別に寄与しております。

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