蛍光X線分析法による亜鉛/ニッケルめっき浴のオンライン分析
AN-PAN-1069
2025-09
ja
2060 XRFプロセスアナライザーは、亜鉛ニッケルめっき浴内の元素濃度をオンラインで連続モニタリングし、化学薬品の添加を精密に制御します。
めっきプロセスにおいて、浴液組成を安定的に維持することは、製品品質と操業効率を確保するうえで非常に重要です。
めっき中に浴液組成が不安定になると、欠陥の発生や運用コストの増加を招く可能性があります。
めっき部品の欠陥は、手直し費用の増加、生産ロス、早期摩耗や腐食による顧客への返品など、広範な影響を及ぼします[1]。
亜鉛-ニッケル(Zn/Ni)めっきは、優れた耐食性で知られています。
その耐食性能は純亜鉛めっきの約5~6倍に達し[2,3]、自動車、航空宇宙、海洋分野で特に高く評価されています。
しかし、最適な Zn/Ni 比率を達成・維持することは容易ではなく、従来の湿式化学分析、AAS(原子吸光分析法)、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析法)といった手法では困難です。
これらの方法は時間がかかり、結果の取得に遅れが生じるという課題があります。
これらの課題に対し、メトローム は 2060 XRF プロセスアナライザーを提供しています。
本プロセスアナライザーは 蛍光X線分析法(XRF)を用いてめっき浴中の元素濃度を連続的にモニタリングし、リアルタイムのデータをもとに正確な薬品添加をサポートいたします。
めっきは、電流を用いてニッケルや亜鉛などの金属を、銅などの別の素材の表面に薄膜を形成する技術です。亜鉛や亜鉛系合金(亜鉛-ニッケル(Zn/Ni)など)は、鋼材を腐食から保護するために広く用いられています。特に Zn-Ni 合金は純亜鉛よりも優れた耐食性を持つため[2,3]、高い需要があります。
亜鉛-ニッケル(Zn/Ni)めっきには、アルカリ性および酸性の浴が一般的に使用されます(図1)。各浴タイプは、用途に応じてそれぞれ独自のメリットを持っています[4]。アルカリ性 Zn/Ni 浴は、良好な被覆均一性(スローイングパワー)を実現できるため、複雑な形状の部品に適しています。一方、酸性 Zn/Ni 浴は析出速度が高く、滑らかで光沢のある仕上がりを得やすいため、外観が重視される用途に好まれます[4]。
めっき浴は、金属析出に大きな影響を与え、最終的な被膜の厚さや品質に直結するさまざまなプロセス変動に敏感です。これらの変動は、温度の変化、めっき槽中の金属濃度の変動、または汚染などが原因で発生することがあります。
めっき浴の定期的な分析は、安定しためっき条件を維持し、材料ロスを最小化するために不可欠であり、めっき浴の連続的なモニタリングは、金属濃度を常に最適範囲内に保つことを可能とします。
めっき浴中の金属含有量は、現場の分析室で手分析により測定されることが一般的です。
この目的には、従来の湿式化学分析、AAS(原子吸光分析法)、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析法)などがよく用いられます。これらの方法は有効ではありますが、時間がかかり、熟練した作業者を必要とするうえ、リアルタイムにデータを提供できない場合があります。その結果、めっき浴の補正の遅れや材料効率の低下を招く可能性があります。
近年、めっきプロセスにおいては、浴液のモニタリングを自動化・最適化するために、最新のプロセス分析技術(PAT)が導入されつつあります。これらのシステムは、金属濃度、pH、温度、導電率などの重要な浴液パラメータをリアルタイムで連続的に分析します。これらすべての要因は、析出される金属皮膜の品質と均一性に直接影響します。
メトローム プロセス アナリティクス の 2060 XRF プロセスアナライザー(図2)は、めっき浴を連続的にモニタリングする効果的な解決策を提供します。
Zn や Ni などの金属濃度をリアルタイムで測定することで、安定して高品質な被膜を得るために必要な理想的な浴液組成の維持をサポートいたします。
蛍光X線(XRF)分析は、プロレン窓を備えたタングステン(W)X線管モジュールを用いて行われます。Vantaモジュールは、あらかじめ設定された校正方法で動作します。サンプル導入は、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)ソレノイドバルブを用いて行われ、このバルブからポンプを経由してサンプル容器にサンプルが導かれて分析が行われます。
| 分析項目 | 測定範囲 [ g/L ] |
|---|---|
| 亜鉛 (Zn) | 6.5–9.5 |
| ニッケル (Ni) | 0.5–2.5 |
亜鉛とニッケルの濃度について、指定された濃度範囲で対応するXRF応答を測定することにより、直線検量線が確立されます。亜鉛については6.5~9.5 g/Lの濃度範囲で検量線が作成され、ニッケルについては0.5~2.5 g/Lの範囲で同様の検量線が作成されます(図3)。検量線作成プロセスでは、既知量の亜鉛とニッケルを浴サンプルに添加し、各測定を3回繰り返して精度を確保します。この結果を用いて、めっき浴中の亜鉛とニッケルの濃度を判定します。これにより、優れた相関関係(両元素ともR²値は約0.998)を示し、正確で信頼性の高い分析が可能になります。
Calibration curve
2060 XRFプロセスアナライザーは、めっき浴中の亜鉛およびニッケル濃度をリアルタイムで連続モニタリングします。滴定法などの補完的な技術を統合することで、pHや導電率などの追加パラメータの追跡が可能となります。
2060 XRFプロセスアナライザーは、金属めっき業界にとって信頼性の高いソリューションであり、電気めっき浴中の亜鉛およびニッケル濃度をリアルタイムでモニタリングします。これらの重要なめっき浴パラメータを継続的に測定できるため、安定しためっき品質の確保、材料の無駄の削減、プロセス効率の向上につながります。
- 作業員にとってより安全な作業環境 − 危険な化学物質への曝露しない
- 均一なめっき被膜厚さを確保できます
- めっき浴液組成異常の早期検出 − 再処理を回避します。
- 品質管理を強化し、実際のプロセス条件をより、正確に把握します。
- めっき浴条件の変化に迅速に対応することで、高品質の最終製品の製造を確実にします。
- The Soft Cost of In-house Rework. https://www.pfonline.com/columns/the-soft-cost-of-in-house-rework (accessed 2025-04-23).
- Westphal, L. Zinc Nickel Electroplating Differences | DeKalb Metal Plating, 2023.
- Leiden, A.; Kölle, S.; Thiede, S.; et al. Model-Based Analysis, Control and Dosing of Electroplating Electrolytes. Int J Adv Manuf Technol 2020, 111 (5), 1751–1766. https://doi.org/10.1007/s00170-020-06190-0.
- Why opt for Acid or Alkaline in Zinc Electroplating?. PAVCO. https://pavco.com/blog/acid-or-alkaline-in-zinc-electroplating (accessed 2025-04-24).