元の言語のページへ戻りました

ボーキサイトからアルミナを精製する方法が「バイヤー法」です。アルミナから直接アルミニウムを精製する方がコストやエネルギー効率が良いため、この製法では、粉砕したボーキサイトを高温の酸化カルシウム(以下、CaO)と水酸化ナトリウム(以下、NaOH)で溶解し、「アルミン酸溶液」をつくります。
また、CaOはアルカリ溶液中で有機物の分解や大気中のCO2吸収によって生成される炭酸塩を苛性化させ、除去します。

不純物はプロセスの様々な段階で除去されます。アルミン酸溶液は濾過され、固形物として残ったアルミナ結晶は溶解工程に戻し、再利用されます。
濾過されたアルミン酸溶液を利用する前に、水酸化物(苛性)、炭酸塩、アルミナの濃度を測定する必要があります。このプロセスアプリケーションノートでは、メトロームプロセスアナリティクスの2060 TI プロセスアナライザーまたは2035プロセスアナライザーの温度滴定法により、アルミン酸溶液中の水酸化物、炭酸塩、アルミナの濃度をオンラインでモニタリングすることに焦点を当てています。

アルミニウムは、自動車、自転車、飲料缶、調理器具、制汗剤など、あらゆるところに使われています。しかし、自然界には存在しません。アルミニウムは反応性の高い卑金属で、ボーキサイトに約60%アルミナ(Al2O3)が含まれています。ボーキサイトから直接アルミニウムを精錬するには、融点が高いため非常にコストがかかります。バイヤー法は19世紀後半にボーキサイトからアルミナを精製するために開発されたもので、精製されたアルミナははるかに製錬しやすく、現在でもほとんどのアルミナ精錬工場でこのサイクルが採用されています。
ボーキサイト鉱石は表面積を増やすために細かく粉砕しなければなりません。その後、アルミン酸溶液、CaO、NaOHと混合され、このスラリーは、高温・高圧下で数時間かけて溶解されます。(図1)。

Figure 1. 図1.バイヤー法の工程図 ★印のある工程でオンライン温度測定滴定を実施できます。

NaOHはアルミナを選択的に溶解し、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2)になります。CaOはボーキサイト中の有機物の分解や大気中のCO2吸収によって生成される炭酸塩(CO32-)を苛性化するため溶液に添加されます。炭酸塩(CO32-)を苛性化するとOH-が生じ、炭酸カルシウム(CaCO3)が析出するので、他の不要性不純物や沈殿物と一緒に除去することが出来ます。

飽和アルミン酸溶液[Al(OH)4‐]を冷した後、結晶化させるため純アルミナの種を撒き、溶液を濾過します。得られた沈殿物を洗浄し、約1000℃に加熱して乾燥させることにより、アルミニウム金属に精製できる粉末となります。溶液は溶解工程に戻し、不純物を除去した後、CaOとNaOHでさらに濃縮され、初めのサイクルをもう一度行います。最終的にアルミニウムを精製するのに必要なボーキサイトの量は約4:1の割合で、これは、かなりの量の副産物が生成されることを意味します。
リサイクル工程内のアルミン酸溶液の分析はバイヤー法の制御において最も重要な分析作業です。
アルミン酸溶液から最高の生産性を維持しながら、プロセス損失を許容範囲に抑えるためには、全苛性、炭酸塩、アルミナの濃度について正確に把握する必要があります。
また、炭酸塩の量を知ることは、炭酸塩除去プロセスの運転を最適化するためだけでなく、アルミン酸溶液に要求される苛性度に対して炭酸塩のレベルを調整するためにも必要です。
メトロームプロセスアナリティクスは、温度滴定法を用いてバイヤー法抽出したアルミン酸溶液中の全苛性、全ソーダ、およびアルミナを分析するための、迅速かつ信頼性の高いオンラインソリューションを提供しています(図2)。
温度滴定法は、工業プロセス内の分析に最適です。
本法は様々な滴定分析に使用でき、堅牢な温度センサーのためアグレッシブなサンプルマトリックスを扱うのに適しています。この温度センサーはメンテナンスをほとんど必要とせず、滴定終点は滴定の二次微分から検出されるため、校正は不要です。さらに、温度滴定法は一般に短時間で行われ、高い分析生産性をもたらします。温度滴定法は、電位差滴定することができない難しいサンプルの問題解決にもなります。

Figure 2. 図2.アルミン酸ナトリウム溶液中の全苛性、全ソーダ、アルミナの定量をした時の温度滴定曲線

アルミン酸ナトリウム溶液を脱イオン水で希釈し、酒石酸カリウムナトリウムと反応させ、存在するアルミン酸の1モルに対して1モルの水酸化物を放出させる(反応1)。


AI(OH)4- +n(C4H46)2- → Al(OH)3(C4H46)n2- +OH-   

反応1。

溶液に含まれる全苛性と炭酸塩(全ソーダ)の含有量は、塩酸(HCl)による滴定で求められます(反応2)。

CO32- + H+ ↔HCO3-

反応2。

フッ化カリウム溶液を添加して、酒石酸アルミニウムを破壊し、不溶性のフッ化カリウム・ナトリウム・アルミニウムを形成し、アルミン酸の1モルに対して3モルの水酸化物を放出させ塩酸(HCl)による滴定で求められます(反応3)。
 

AI(OH)3(C4H46)n2- + 6F- →3OH- + n (C4H46)2- + AIF 63-

反応3。

 

次いで、2回目の滴定を自動的かつ直ちに行い、アルミン酸の含有量(アルミナとして)を求めます。
 
全ソーダは、総苛性含有量に液の炭酸塩含有量を加えたものとして定義されます。
全苛性はアルミン酸塩[Al(OH)4]アニオン中に含まれる4種の未結合の水酸化物イオンのうち1つの水酸化物イオンからなる溶液および1種の水酸化物イオンを含む全水酸化物含有量と定義されます。

Figure 3. メトロームプロセスアナリティクスの2060 TI プロセスアナライザー
Figure 4. 2035 プロセスアナライザー 温度滴定仕様
表1.   バイヤー法抽出時、温度測定滴定によりオンラインで測定した3つのパラメータ
パラメータ 範囲
全苛性 17 ~ 150 g/L (Na2Oとして)
総ソーダ 1 ~ 155 g/L (Na2Oとして)
アルミナ 17 ~ 170 g/L (Al2Oとして)

 

高度に濃縮された液は、全てのアルミン酸塩を酒石酸塩試薬と効果的に錯化するために、減少したサンプルサイズおよび改変された滴定剤量を必要とし得ます。非常に希薄な液は直接滴定することができます。純粋なアルミン酸ナトリウム溶液は、浄水、紙や合成ゼオライトの製造に使用するためにも製造され、本アプリケーションの分析方法は、それらの溶液にも適しています。

メトロームプロセスアナリティクスの2060 TI プロセスアナライザーおよび2035 プロセスアナライザーの温度滴定法により、アルミナの濃度だけでなく、アルミン酸溶液中の全苛性および炭酸塩(全ソーダ)の濃度も測定することができます。この方法は、アグレッシブなマトリクスに適しており、センサーのメンテナンスをほとんど必要とせず、高感度分析が可能です。

  • 自動分析によるプロセスの異常検知
  • 生産性の向上 製品のスループット、再現性、 生産速度、化学物質の投与量、及び収益性の向上
  • 完全自動診断-サンプルが仕様範囲外にある場合の自動アラーム
お問い合わせ

メトロームジャパン株式会社

143-0006 東京都大田区平和島6-1-1
東京流通センター アネックス9階

お問い合わせ