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ASTM D8045規格に基づいた原油および軽油の酸価測定

AN-H-141

2024-03

ja

温度滴定法は、石油化学産業で使用される各種油製品の分析において、迅速かつ信頼性の高い測定を可能にする手法です。

温度滴定法は、ASTM D8045に準拠して各種原油製品の全酸価(TAN)を測定することが可能であり、センサーの保守を必要としない点で優れた利便性を示します。本手法では、温度変化を指標として滴定終点を検出するため、電極の汚染や劣化に伴うメンテナンス作業が不要となり、連続測定や高頻度の品質管理において高い実用性を有しております。また、複雑なマトリックスを含む重質油に対しても良好な再現性と信頼性を示すことから、原油評価における有効な分析手法の一つとして位置づけられます。

原油の全酸価(TAN)を正確に把握することは、その価格を評価する上で重要な要素となります。さらに、原油および関連するプロセス油の酸価具合を継続的にモニタリングすることで、設備の予期せぬシャットダウンを未然に防ぐことができ、これにより高価な処理薬剤の過剰使用を抑制する効果も期待できます。このように、酸価の管理は経済的側面およびプラント運転の信頼性の両面から極めて重要であるといえます。

温度滴定法(Thermometric Titration, TET)は、各種石油製品に含まれる全酸価(TAN)を分析するための信頼性の高い手法です。TETでは、電位を指標とする従来法とは異なり、反応に伴うエンタルピー変化を指標として用います。滴定の進行に伴って温度が変化し、その温度曲線に現れる屈曲点が滴定終点を示します。この特徴により、TETは複雑なマトリックスを含む試料に対しても高い再現性と安定した終点検出性能を示します。

本アプリケーションノートでは、ASTM D8045に準拠し、温度滴定法により様々な油製品の酸価を測定しました。温度滴定(TET)は、電位差滴定法と比較して測定速度が速く、操作性にも優れている点が特徴となります。このことから、TETは高頻度の品質管理や迅速な分析が求められる現場において、より実用的な手法として位置づけられています。

本アプリケーションは、さまざまな原油関連製品に対して適用されることを実証しております。

通常、サンプルの前処理は必要としません。しかし、一部のサンプルについては、滴定前にわずかに加温するか、キシレンに溶解させる必要がある場合があります。また、60 ℃未満に加温したサンプルでも、滴定の分解能や精度を損なうことなく測定することが可能です。

図 1. 本測定には、dThermoprobeおよびロッドスターラーを搭載したOMNIS Professional Titratorを使用しております。

本測定は、dThermoprobeを搭載したOMNIS Professional Titrator(図1参照)を用いて実施しております。薬品の手作業による取り扱いを避けるため、すべての試薬はOMNIS Dosing Moduleを使用して自動的に添加することが可能です。

適量のサンプルを滴定容器に秤量した後、溶媒およびパラホルムアルデヒドを添加いたします。その後、水酸化カリウム滴定溶液を用いて滴定を行い、最初の終点(発熱)を過ぎるまで滴定を行います(図2参照)。

本手法は、全酸価(TAN)の測定において非常に高い測定精度を示しており、その結果は表1に示す通りです。

表 1. OMNISシステムを用いたASTM D8045に基づく全酸価(TAN)測定結果

サンプル

(n = 6)

平均値

Mean

[mg KOH/g ]

変動係数

SD(rel)

[%]

Cutting oil 切削油 0.96 0.2
Desalted Crude 脱塩原油 0.76 2.1
Raw Crude 原油 0.73 1.1
Vac. Light Gas 減圧軽油 1.23 0.0
Vac. Heavy Gas 減圧重油 1.25 0.8
Atm. Heavy Gas 大気圧重油 1.15 1.2
650 Endpoint Gas 650℉ 残油 0.73 1.1
図 2. 原油サンプルの温度滴定曲線

温度滴定法(TET)は、各種原油製品の全酸価(TAN)を一度の簡便な滴定で迅速かつ高精度に測定できる手法です。センサーの保守が不要であるため、TETは従来の指示薬を用いた滴定法に代わる信頼性の高い方法として有用です。

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